九州吹奏楽コンクール(一般・職場の部)

一般の部は松陽高校OB吹奏楽団「緑」とJ.S.B.吹奏楽団が代表に選ばれました。九州一般代表の鹿児島独占は初めてではないでしょうか。
職場の部はいつものブリヂストン

第51回九州吹奏楽コンクール 一般・職場の部
2006年8月27日 於:イイヅカコスモスコモン

  1. リバティーWE (2)バレエ音楽白鳥の湖」より(ピョートル・チャイコフスキー/林紀人編)――銀
  2. ひむかSound Club  (1)序曲「コラブルニョン」(D・カバレフスキー/ハンスバーガー編)――銀
  3. 佐賀市民吹  (5)エンディミオンの眠り(樽屋雅徳)――金
  4. 松陽高OB吹「緑」 (1)バレエ音楽白鳥の湖」より(ピョートル・チャイコフスキー/淀彰編)――金・代表
  5. 飯塚吹  (3)交響曲第2番「キリストの受難」より(フェルレル・フェルラン)――銀
  6. 熊本WO  (3)サンタフェ・サガ(モートン・グールド)――銀
  7. コザ・フェスタ  (3)組曲「第六の幸福をもたらす宿」より(マルコム・アーノルド/瀬尾宗利編)――銀
  8. J.S.B.吹  (3)「交響組曲第1番」より(天野正道)――金・代表
  9. 宮崎市民吹  (2)原石の未来(清水大輔)――銀
  10. 天草吹  (3)マリアの七つの悲しみ(樽屋雅徳)――銀
  11. 長崎市民吹  (2)コルドーン(スティーヴン・メリロ)――銀
  12. 宮之城吹  (1)三つのジャポニスム真島俊夫)――金
  13. 中村学園OB吹 (1)モラヴィア組曲(P・スタニク)――銀
  14. 那覇市民吹  (2)ミュージカル「ミス・サイゴン」より(クロード・ミッシェル=シェーンベルク/宍倉晃編)――失格
  15. 北九州PH吹  (3)歌劇「ヘンゼルとグレーテル」より(E・フンパーディンク/中原達彦編)――銀
  16. ジョリーカンパニーWE (4)組曲「第六の幸福をもたらす宿」より(マルコム・アーノルド/瀬尾宗利編)――銀
  17. 大牟田奏友会  (3)星の王子さま(樽屋雅徳)――銀
  18. ナガサキWO  (2)ミュージカル「チェス」より(B・アルバース、B・アンダーソン/デ=メイ編)――銀
  19. 熊本市民吹  (3)鳳凰〜仁愛鳥譜(鈴木英史)――銀
  20. みささぎ吹  (1)民衆を導く自由の女神(樽屋雅徳)――銀
  21. 春日市民吹  (1)マゼランの未知なる大陸への挑戦(樽屋雅徳)――金
  22. ウインドミュージアムSO (3)太陽への賛歌−大地の鼓動(八木澤教司)――銀
  23. 臼杵WE  (5)内燃機関(デイヴィッド・ギリングハム)――銀
  24. 西区市民吹  (1)「ハイランド賛歌組曲」より(フィリップ・スパーク)――銀
  1. ブリヂストン久留米 (1)交響詩「ローマの松」より(オットリーノ・レスピーギ/デュカー編)――金・代表
  2. 新日本製鐵大分 (3)交響組曲「寄港地」より(J・イベール/デュポン編)――銀

感想ですが、長いので久しぶりに「続きを読む」使います。
例年に比べると低調、というのが全体的な印象です。決して演奏のレベルが下がったというわけではないのですが、どの団体も上手なのに心を動かされる演奏がわずかしかなかったということです。なぜそんな風に感じたのかというと、まず第一に全国常連の有力団体を一、異例といえるほど多数の団体が樽屋雅徳の作品を取り上げ、そしてそのいずれもの曲が楽曲としてつまらなかったということが挙げられます。中学生が演奏するなら、このように分かりやすいメロディーと構成には教育的価値もあろうかと思いますが、高度な演奏技量を持った大人の一般バンドが年間で最も集中して一曲を仕上げるには値しません。昨年佐賀市吹奏楽団が「マリアの七つの悲しみ」を取り上げ、全国大会で素晴らしい演奏をしたことから、私も樽屋雅徳作品を見直していたのですが、今回5団体が樽屋雅徳のそれぞれ違う曲を取り上げたにもかかわらず、全て同じ印象、つまり平板で曲の構成や和音の構成が皆同じで、メロディーとテュッティだけで構成された稚拙な曲だという、それ以上の印象がなく、どれほど演奏技術が高かろうと音楽的な感銘を受けることはありませんでした。
今回佐賀市吹奏楽が取り上げた「エンディミオンの眠り」は、残念ながら「マリア〜」ほどストレートに佐賀市吹の魅力を伝える楽曲ではなく、樽屋作品のそこの低さを露呈したように思います。それとは別に、審査員は楽曲のよしあしではなく演奏面で評価をしたのでしょう。朝早いということもあり、今回の佐賀市吹は例年のようなサウンドの柔軟さがなく、大編成の大音量だけにしか見るべきところがありませんでした。もちろんそれだけでも魅力的ではありましたが。
まさかの銀賞という結果に終わった大牟田奏友会ですが、やはり自由曲がつまらない。素晴らしい演奏技術、すばらしいサウンドにもかかわらず、その技術が楽曲を通して客席に伝わらないというのは本当にもったいないことです。それでも銀賞というのは不可解ですが、楽曲の性質上、テュッティサウンドのfが連続して出てくるので印象が悪かったのではないかなあと推測します。春日市吹奏楽は金賞でしたが、やはり心を動かされる演奏ではありませんでした。「マゼラン〜」は部面転換が明快で分かりやすく、他の曲に比べるとまだ演奏技術の多彩さを見せられる分、高く評価されたのではないでしょうか。
これに対して鹿児島代表の3団体は、流麗なサウンドと素晴らしい音楽表現を武器に、聴衆を魅了していました。久しぶりの代表となった松陽高校OB吹奏楽団「緑」は、さらに磨きがかかった木管サウンドがホールいっぱいに広がり、また奇も衒いもない正攻法の「白鳥の湖」には癒されました。ただ、「癒された」以上のインパクトがなく、もう一押しの魅力がなければ全国大会で評価されることは難しいと思います。同じく代表となったJ.S.B.吹奏楽は、金管木管の流麗な音色が絶妙にブレンドされた独特のサウンドが素晴らしく、独自の音楽世界を作っていました。しかし昨年に比べるとアナリーゼの緻密さとサウンドの輝きなどは落ちており、感動、というほどまでには至りませんでした。
私が今回唯一音楽的に感動したのは宮之城吹奏楽です。まだ全盛期の透明感のあるサウンドには遠いものの、幸喜先生の良く動く棒から繰り出される変幻自在の音楽に魅了されました。全体を通してバンドの一体感に圧倒され、「三つのジャポニスム」には体が震えるほど感動しました。代表から漏れたのは残念ですが、この演奏を聴けただけでも足を運んだ甲斐があったというものです。
他に良かった団体としては、まずナガサキ・ウインド・オーケストラ。アンサンブルに荒っぽいところがありましたが、サウンドが立体的で、輝きがありました。熊本市吹奏楽もまた、サウンドが立体的で、難曲にもかかわらず音楽的推進力を備えた熱演でした。ウインドミュージアムSOは、サウンドでは他の団体に劣るものの、個々の奏者の技量が高く、演奏会を聴くような気持ちで音楽を楽しめました。選曲がいいですね。
続く職場の部ではブリヂストン吹奏楽団久留米が、相変わらず圧巻の演奏をしてくれました。県大会に比べると小野先生の指揮が情熱的で、その分奏者に冷静さがなくなり、熱演だったけど荒っぽい演奏だったような気がします。特に終盤のトランペットのトップはまったく音が当たらず、聴いているほうとしては少なからず落胆しました。しかし中低音と木管の充実したサウンドは、55人にもかかわらず今日出演したどのバンドよりも立体的で、豊富な音量で、それでいてうるさくなく、文字通りホールを包み込む圧倒的なものでした。全国大会では例年通り繊細でありながらダイナミックな演奏をしてくれることでしょう。
最後に、全国大会3年連続出場を果たした精華女子高校が特別演奏を披露しました。一般・職場の部なので会場はおじさん・おばさんおねえさんばかり。そこへ日本で最も元気な女子高バンドが100人単位で登場したものだからもう大変です。若さと青春のまぶしさに、ブリヂストンとは別の意味で圧倒されました。徹底したエンターテインメント精神が本当に素晴らしく、演出や踊りひとつ取ってもお客さんを楽しませようとする工夫のあとが見て取れ、どんなことでも一生懸命練習し、突き詰めて実行すれば、お客さんを楽しませるに足るステージが出来上がるということを示しました。全てのスクール・バンドの模範といえるのではないでしょうか。素晴らしい「ショー」でした。ただ、一般の部ではなく、中学か高校の部で披露したほうが有益だったと思います。