北村薫『ニッポン硬貨の謎』

ニッポン硬貨の謎

ニッポン硬貨の謎

天城一を差し置いて、買った一両日に寝る間も惜しんで読了。至福のひと時でした。
一流のパスティーシュとはこういう作品のことを言うのだ、と思わず宣言しちゃいたくなります。大家の文体そっくりでプラスアルファ要素もあってなおかつこの作者らしい小説になっているというミステリでは、島田荘司漱石と倫敦ミイラ殺人事件』を髣髴とさせますね。

197×年、エラリー・クイーンは日本に招待され、彼のファンから熱烈な歓待を受けた。学生らの若いファンの集いの中で彼の興味を引いたのは、女子学生小町奈々子が披瀝したクイーン作品の鋭い分析だった。折しも日本で日曜日ごとに発生していた幼児誘拐殺人事件、奈々子がバイト先の書店で体験した五十円玉二十枚を千円札に両替する男。クイーンが奈々子とともに上野動物園に観光に行ったとき、幼児殺人事件の手がかりとなる事件に遭遇する。クイーンの明晰な頭脳は久しぶりにフル回転し、事件は思わぬ展開をむかえる・・・。

作中で奈々子(モデルは若竹七海)の口を借りてクイーン論が展開されているけど、素晴らしく刺激的な論稿でした。『シャム双子の謎』を事前に読み返しておいてよかった。国名シリーズにこんな仕掛けがあるとは気がつきませんでした。
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