今年の課題曲


なにわ《オーケストラル》ウインズ2006
ボーナスCD

  1. 【課題曲IV】海へ...吹奏楽の為に (三澤慶)
  2. 【課題曲III】パルセイション (木下牧子
  3. 【課題曲II】吹奏楽のための一章 (堀内俊男)
  4. 【課題曲I】架空の伝説のための前奏曲 (山内雅弘)
  5. 【課題曲V】風の密度 (金井勇)
  • 指揮:1 丸谷明夫 2-4 宇畑知樹
  • 演奏:なにわ《オーケストラル》ウインズ

一般楽団に所属しておらず、吹奏楽はもっぱら「聴き専門」になってしまっているきたろーは、「なにわ」で始めて今年の課題曲を聴きました。
一言でいえば、今年の課題曲は良い曲が多いという印象。以下、このCDをきいての課題曲の感想を書いておきますが、あくまで今回始めて課題曲を聴き、スコアも参照しておらず、作曲者のコメントすらも読んでいない一個人の印象にすぎないことをご留意ください。
「架空の伝説のための前奏曲」は劇版音楽風でカッコいい。特に中間部のメロディなどは感動的。「なにわ」の演奏はホルンの下降オブリガードがききまくっていて劇的で素晴らしいですね! アマチュアには難しいかもしれないけど、これくらい堂々としたホルンをコンクールでも聴きたいです。ポイントとしては、長く曲想が多様な曲だけに、聴衆を飽きさせないような場面転換のメリハリが大切。
吹奏楽のための一章」はコミカルな作風、というよりも「カーニバルのマーチ」などを髣髴とさせる「にぎやかな」曲。軽妙で遊び心たっぷりの「なにわ」の演奏はさすがで、こういったにぎやかな感じをアマチュアが出すのはとても難しいのではと思います。木管のメロディは軽快に、しかし随所で決めるサウンドはゴージャスに響かせるといいのではないでしょうか。
「パルセイション」はとても難しい曲だと思います。おそらく譜面面はそんなに難しくはないと思うのですが、曲全体を通したストラクチュアの解析がうまくいかないと、ただ漫然と同じリズムを繰り返すだけになりかねません。音楽的緊張感の持続が重要です。「なにわ」の演奏はとても素晴らしいものですが、テンポ設定の関係か少々緊張感に欠けているようにも思えました。果たしてコンクールでこの曲を満足に表現できる団体は現れるのでしょうか?
「海へ...」は、風景描写に優れた癒し系メロディーが印象的。試聴音源で「風紋に似てる・・・」などと思った冒頭のトロンボーンのリズムですが、確かにこれは緊張するし難しい。反復練習が必要でしょう(笑)。「なにわ」はとても柔らかに処理していて素晴らしいです。柔らかにリズムを処理することによってその後のメロディを効果的に浮き立たせ、感動的な表現力を得るにいたりました。コーダの前にある謎の空白地帯は何なのでしょうか。まるでハーモニー練習のようで、ここだけ明らかに浮いています。作曲者の意図がよく分かりません。いずれにせよ、息の長い表現力の獲得のために、ロングトーンをしつこくすることが必要不可欠な曲です。
「風の密度」、これも素晴らしい曲。難解すぎることもなく、分かり易すぎることもない適度な音楽的バランスは、全盛期の課題曲の名曲たち(「変容−断章」「深層の祭」「斜影の遺跡」など)を思い起こさせます。一定の技術力をもってしなければこの緊張感は表現不可能で、まさしく大人の課題曲にぴったりです。「なにわ」の演奏は指揮者なしでいったいどうやってこの難曲でこれだけの演奏ができたのかと、驚きを隠せません。凄すぎ。