若竹七海ほか『競作 五十円玉二十枚の謎』

競作五十円玉二十枚の謎 (創元推理文庫)

競作五十円玉二十枚の謎 (創元推理文庫)

この競作短編集は新本格初期の頃、若竹七海がかつて体験した未解決の謎をもとに東京創元社の名編集者・戸川安宣が仕掛けたアンソロジー企画の集成である。解答編を寄せたのはプロの作家たちをはじめ、公募で選ばれたアマチュア作家たちで、アマチュアの中にはこのアンソロジーに採択されたことがきっかけでプロの作家になった人もいる。

本屋のアルバイトをしていた若竹七海は、不思議な客と遭遇する。若竹嬢がレジに入っていたある土曜日の夕方、ぱっとしない身なりの中年の男が店に入るなり、本も買わずにレジにやってきておもむろに50円玉を20枚差し出し、1000円札に両替するよう要求する。不審に思いつつも若竹嬢がマニュアルどおりに愛想よく硬貨を数えるあいだ、男はなんだか苛立っていて、両替がすむとひったくるようにして紙幣を受け取り、礼も言わずにそのまま本屋を出て行くのだった。それから男は毎週土曜日の夕方になると同じように50円玉20枚を両替するために本屋を訪れ、その妖しげな行為は若竹嬢がバイトを辞めるまで続いたのである。

この男の行為に整合性のある解答を与えるのが、解答者に求められた課題だ。1.男はなぜ、定期的に本屋で両替をさせるのか。2.なぜ1週間ごとに男の手元に20枚もの50円玉が貯まるのか。この2点が問題だというが、個人的には3.男はなぜ両替を急ぐのか。という点を答えるべき謎の第三点として提示すべきだと思う。解答者の答えやいかに?
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