高橋哲也『靖国問題』

靖国問題 (ちくま新書)

靖国問題 (ちくま新書)

このブログはミステリと吹奏楽以外の話題はあまり取り上げないつもりだったんですが、書くことがないのでこういう分野の本も簡単に感想を書いておきます。
小泉の靖国参拝問題やら中国の半日デモなどで右翼からも左翼からも様々な議論が噴出して訳がわからなくなっている「靖国問題」を、その歴史的起源や思想的特質から詳細に解剖した好著。
著者の基本的姿勢はきたろーと同じく自由主義的でとてもためになりました。国を代表して首相が靖国神社でお参りするなら、どうあがいても「平和」を祈念することにはなりませんね。靖国での顕彰を望む遺族の方々ならばまったく構わないと思いますが。
国立追悼施設の問題ばかりか、「平和の礎」など既存の追悼施設への政治の関与についてもかなり鋭い(個人的にはやりすぎのような気もする)メスを入れていて、非常に批判的な論稿だと思いました。批判的、思想的であるばかりでなく、実証的にも優れているところが説得力を高めています。いずれにせよ今後「靖国問題」を考える上での必読書といえましょう。