アガサ・クリスティ『ミス・マープルと13の謎』
- 作者: アガサ・クリスティ,高見沢潤子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1960/05/06
- メディア: 文庫
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ポアロと並ぶクリスティーの創出した名探偵、ミス・マープルが初登場した短編集。しかしちゃんと短編集をつなぐ設定もあり、連作短編集としても読むことができます。
ハヤカワ版では『火曜クラブ』というタイトルなのですが、ミス・マープルの家に集まった6人の紳士淑女たちが事件の話を提示し、皆で謎を解くという趣向の会合が行われ、これが「火曜クラブ」というわけです。皆はいろいろな解答を出しますが、最後にずばり真相を言い当てるのはもちろんミス・マープルです。推理合戦ということで、バークリーの『毒入りチョコレート事件』風の短編集でもあります。
しかも、一編一編に実に魅力的な謎が用意されており、また神秘的な味付けも付与されて、シンプルにして本格ミステリの精髄をいちいち堪能できる魅力を兼ね備えています。収録された短編は以下のとおり。
1.火曜ナイトクラブ 2.アスターテの祠 3.金塊 4.血に染まった敷石 5.動機対機会 6.聖ペテロの指の跡 7.青いジェラニウム 8.お相手役 9.四人の容疑者 10.クリスマスの悲劇 11.死の草 12.バンガロー事件 13.溺死
個人的には、物語性と謎解きの鮮やかさがあり、さらに最後の仕掛けにあっと言わされる贅沢な短編である「バンガロー事件」がベスト。謎がシンプルにして魅力的過ぎる「動機対機会」、事件の演出とハウダニットが魅力的な「青いジェラニウム」、マープルがほとんど出てこないにもかかわらず、マープルの存在感が全編にあふれる「溺死」などもすばらしい。
古典の中でもシャーロック・ホームズのシリーズに匹敵するほどの高水準の短編集です。これはお勧め。