楽観的観測とそれ以外

国会で圧倒的多数を確保した小泉自民党政権はどんな法案でも政府内で合意されれば通すことができる。これは独裁だ。日本がナチス・ドイツのように右傾化し暴走するのではないか――という極端な意見があるようです。
もちろんこれは妄言です。ヒトラーナチス以外の政党を禁止し、参議院を事実上廃止し、中央集権化を進め、授権法による議会制民主主義の空洞化を実行し、その上で独裁制を確立したのです。現代日本においてこうした脱議会制民主主義を進めることは、制度的にも国際環境的にも不可能です。小泉政権ナチスになぞらえることには相当に無理があるといえます。
少なくとも国内政治については、次の選挙もあるわけですから、あまり極端な独善的政策は実行に移せないのではないかと楽観視しています。
また、小泉チルドレンとも言うべき新議員たちが取り巻きとなって政策の右傾化が進み、首相の靖国参拝や日本の戦争肯定など中国・韓国を刺激する行動を実行に移し、東アジアの緊張が高まるという予測があります。
これもどうでしょうか。地政学的に言って日本は中国と韓国との関係を無視することは、経済的にも安全保障的にも不可能ですから、これ見よがしに彼らに喧嘩を売ることは国益に反すると私などは思うのですが、そうは思わない勢力が国会内の多数派を占めていることも事実です。しかしそのような事態を招くことには、小泉政権の行動を規定する経済界とアメリカの双方が反対しているので、アメリカとの同盟を切り、財界の圧力を無視しない限りは、極端に右傾化することもなさそうです。
要するに今後の小泉政権を観察する上での問題は、国内政治では「小さな政府」方針の行方と憲法改変問題、そして対外的には自衛隊イラク撤退問題、この3つにしぼられるのではないでしょうか。
これらの問題の行方場合によっては日本の未来を長期的に規定します。慎重に観察しなければなりません。