大阪市音楽団「スパーク:宇宙の音楽」

スパーク:宇宙の音楽 <世界初演ライヴ>

  • 指揮:山下一史
  • 演奏:大阪市音楽団
  • 販売:オクタヴィア

【曲目】
1.ミュージカル「ミス・サイゴン」より/クロード=ミッシェル・シェーンベルグ(arr.宍倉晃)
2. モニュメント/ロバート・W・スミス
3. ラクス・ノヴァ/エリック・ウイッテカー
4. 吹奏楽のための交響曲モンタージュ」/ピーター・グレイアム
5. 喜歌劇「小鳥売り」セレクション/カール・ツェラー(arr.鈴木英史)
6. 宇宙の音楽<吹奏楽世界初演>/フィリップ・スパーク
7. ミュージック・イン・ジ・エアー/アルフレッド・リード

今年春に行われた伝説的ライブの録音版。話題のスパーク「宇宙の音楽」も含めてよい演奏だったという評判は漏れ聞いていたので、このライブCDは待ちに待った一枚です。
「宇宙の音楽」はもともとはブラスバンドの曲で、昨年の欧州ブラスバンド選手権で史上初のダブル・ハットトリック(6年連続優勝)を果たしたヨークシャー・ビルディングが自由曲として演奏するためにスパークに委嘱した作品です。その余りにも圧倒的な演奏に、吹奏楽版の印象はかなり薄れるのではないか、と心配でしたが、この演奏を聴いて感動しました。ブラスバンド版に比べてはるかに流麗な「孤独な惑星」「ハルモニア」は、吹奏楽ならではの「宇宙の音楽」でした。この難曲を最後まで情感豊かに演奏した大阪市音楽団に拍手!
ボントロ吹きとしては、「ハルモニア」終盤の、この曲で最もおいしいトロンボーンのオブリガードが弱いことと、一番最後でトロンボーン含めてアンサンブルがぐちゃぐちゃになってしまったことが残念でしたが、総じて満足いく演奏でした。ぜひトップ・アマチュアにも演奏してもらいたいですね。
この演奏で「宇宙の音楽」が好きになった方は、ぜひ原曲の元祖ヨークシャーの名演をお聴きください。↓

欧州ブラスバンド選手権2004・・・欧州選手権のライブ版。場面転換の鮮やかさ、「ハルモニア」の圧倒的なソプラノ・コルネットの響き、ラストの疾走感、全てにおいて圧倒的な超名演。
ヨークシャー・ビルディング・ソサイエティ「スパーク:宇宙の音楽」・・・こちらはスタジオ録音版。ライブ版に比べると安全運転なテンポ設定なのが残念だが、ミスはなく完璧。「ハルモニア」のトロンボーンが本当に涙が出るほど素晴らしい。

他の収録曲ですが、「ミス・サイゴン」はもう耳にたこができるほど何回も聴いた曲なのに、「今がこのとき」の荘厳なハーモニーに思わずじーんと来ました。さすがプロと思わせる、よい演奏です。
スミスの新曲「モニュメント」は面白い曲ですね。最近のロバート・スミスは以前のワンパターンさからだんだん脱却してきて、良い味が出てきました。終盤は「ロデオ」とか「エスタンシア」っぽい。
グレアム「モンタージュ」は、これまたブラスバンドが原曲ですが、「ハリソン」なんかに比べると、吹奏楽に編曲する意義は薄いような感じです。しかし「アロー」の難しいフレーズなども軽快に演奏されていて感心しました。
「小鳥売り」はこなれた感じ。終盤は落ち着いた感じで始まって、急にテンポが速くなるのがよい。この曲に限りませんが、市音(というか山下一史)は優美なフレーズの表現がとても上手です。中間部はため息ものの美しさ。
今まで私が買った大阪市音のCDの中で間違いなくベストの演奏。これからも進化していく市音の活動に目が話せませんね。