山田真哉『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)

そういえば以前に「新書」のカテゴリーも作ったことを思い出し、先輩に薦められて最近読んだこの本を。読みやすくて面白かったです。
著者は会計士、でも副業のほうが儲かっているでしょうね。連繋で本業のほうも儲かるといいですね。でもそうすると執筆の時間もなくなるわけで、やっぱりバランスが難しいということか。
とにかく表題が秀逸で、というかタイトルのつけ方が秀逸で、確かに「なんでさおだけ屋は潰れないんだろう?」と思ってしまう。で、思わず手に取る、売れる。山田氏には確かに金儲けのセンスがあるようだ。
最初の何編かはミステリ仕立て。身近にある会計に関する謎を手がかりを捜して解くという、ミステリならではの「腑に落ちる感」があります。むりやりミステリに絡めて感想を書いてみました。
ところで「機会損失」ですが、半年ほど前に米澤穂信の『氷菓』と『愚者のエンドロール』の新装版を探しに本屋に行ったのですが、ある本屋では『氷菓』が1冊、もう一方の本屋では『愚者』が1冊ありました。新装版が出たばっかりのことです。たぶんひとつの本屋にどちらも平積みであれば、そこで2冊とも買ったでしょうが、1冊づつなので買うのをやめました。米澤穂信のサイトを見るに、同じような状況が全国で見られたようです。要するに角川が新装版を少なめに刷っておいたのでしょう。
しかし角川書店は、ここで明らかに米澤穂信の本を売る機会を失したわけで、売り上げは2冊分マイナスです。しかも『クドリャフカの順番』を読む前にシリーズの2冊を買おうと思っていた人ならば、『クドリャフカ』のほうも買わないわけで、3冊分の機会損失になります。
売るほうの姿勢、時流の読み、販売戦略などからいって、このときの角川はミスを犯した、といえるかもしれません。シリーズ物の本を売るときの戦略では、多分にこの機会損失の恐れを持たなきゃいけないと思いました。売るほうにしてみれば在庫過剰のほうが心配なんだろうけどね。