アガサ・クリスティー『パディントン発4時50分』

パディントン発4時50分 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

パディントン発4時50分 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

パディントン発4時50分の列車の一等客室に乗り込んだマクギリカディ夫人は、寝ぼけ眼で窓の外を見た。一台の列車が近づいてきてほとんど並走状態になり、ちょうど並走している車両の開いた窓から、向こうの中の様子がよく見える状態になった。夫人はあっと息を飲んだ。向かいの客室で、女の首を絞めている黒っぽい服を着た背の高い男の後姿が見えたのだ! 女が息を引き取るのを待っていたかのように、まもなく向かいの列車は先にいき、見えなくなった・・・。彼女は駅員に自分の見た光景を伝えるが、死体は車内から発見されず、聞く耳を持ってくれない。あれは幻などではない、そう信じるマクギリカディ夫人は、親友のミス・マープルに話を聞いてもらうために、セント・メアリ・ミード村に立ち寄った。

鉄道ミステリーかと思いきやさにあらず。列車からみた殺人行為という魅力的な謎から始まり、舞台は富豪の屋敷へ。設定が素晴らしい。ルーシー・アイレスバロウって今なら萌えキャラにされてしまうよなあ、などと思いながら楽しく読みました。
しかし解決編は不満。最初と最後しかマープルが登場しないのももどかしい。あとこれは旧版だけだと思うんですが、解説を書いているのが和製クリスティーと呼ばれた山村美紗先生で、女性名探偵としてのマープルについて持論が書かれてあるのが興味深かったです。
>感想ページへ