全日本吹奏楽コンクール2005(その1)

kitarojp2005-11-24

キングレコードへのささやかな抵抗を込めて、中学高校は買わないつもりだったんですが、誘惑には勝てず結局発売日に買いに行ってしまいました。全部買ったわけではありません。曲目、団体などから次の2枚をセレクトして購入。
全日本吹奏楽コンクール2005 高校編2
全日本吹奏楽コンクール2005 高校編3
録音は特に問題なし。一番気になったのは拍手の後のアナウンスがこれまでに例になく早いこと。これじゃあ演奏の余韻を味わえませんって。高校後半からはアナウンスが入っていないから、おそらく連盟か審査員からクレームが来たのでしょう。
以下一団体ごとにレヴュー。
凡例:団体名(指揮者)、課題曲番号:自由曲(作曲)
【高校編2】
松本美須々ヶ丘高校(山岸明)
4:交響曲第5番より(M.アーノルド)・・・銀

課題曲は演奏しにくい曲だと思っていたが、よくフレーズをつなぎ合わせており、自然な感じに仕上げてあった。自由曲は佐川節を聴きなれたせいかまだまだ歌いこみが足りない印象。木管の各ソロも音色の研究が必要かと。原曲どおり静かに終わるエンディングはよかった。バランスのよい、非常に丁寧な演奏。


おかやま山陽高校(松本壮史)
2:バレエ音楽中国の不思議な役人」より(B.バルトーク

適正な速度で順調な滑り出しのマーチ。木管金管ともに音色が曇り、サウンドが厚ぼったく、「春風」というには爽やかさが足りなかったかなと。自由曲は気迫あふれる熱演。カットも既存のコンクールカットとは異なり、バレエのさまざまな情景をできるだけ取り込もうとする姿勢がよい。音楽がバンドのサウンドにあっている。


武生東高校(植田薫)
3:コンサートバンドとジャズアンサンブルのためのラプソディー(P.ウィリアムズ)・・・銅

実はこの課題曲3こそが、今年のマーチの中で一番難しかったのかもしれない。どんなにアナリーゼをしても雑然と聞こえるなか、この演奏は音をよく整理しているが、そうするとあっさりしすぎて「パフォーマー」な楽しさが出ない。自由曲は前半が生真面目でノリがやや足らなかったが、後半は雰囲気のよい演奏だった。各ソロも健闘。銅賞というのは酷な感じ。


埼玉栄高校(大滝実
4:狂詩曲「ショパンエチュード」(宍倉晃)・・・銀

端正でしっかりとした構成のマーチ。特筆するところもないが素直に聞ける。自由曲は栄専属の作・編曲家(OBか何かでしょうか?)の注目作。テュッティのサウンドはゴージャズで、超絶技巧を駆使した木管指回しもお見事。ショパンならではの哀愁漂うメロディーも良い。ソロをはじめとする楽器群の音色も美しく、どこが悪かったのかよくわからない演奏。あえていえば複数のエチュードをつなぎ合わせた曲のコンセプトが見えにくいところか。でもそれは演奏の質とは関係ないと思うのだがなあ。


柏高校(石田修一)
3:ウインドオーケストラのためのムーブメントII〜サバンナ(石原忠興)・・・銀

よく音符が整理されており、その上音色が良いのに、やはり雑然と聞こえる。各楽器の主張が強すぎるのだろうか。自由曲は面白い曲。後半のパフォーマンスに走りがちな部分よりも前半のやや現代曲風の展開に魅力を感じる。見事な演奏能力。猿の鳴き声、象の鳴き声、足踏み、手拍子などはおそらく楽譜上にはないのだろう。作りすぎた感があり、逆に楽曲本来が持つ魅力を減じさせてしまっているように思う。ソロは超高校級。


淀川工業高校(丸谷明夫)
2:大阪俗謡による幻想曲(大栗裕)・・・金

やや走りすぎな気もするが、絶妙のドライブ感覚でぐいぐいと引っ張っていく淀工のマーチにはやはり魅力がある。トロンボーンの音色がいまひとつ。木管サウンドが実に鮮やか。多少の傷はあるがここまで爽快に演奏しきれば文句はないだろう。自由曲はもう何回目だろうか。「十八番」というのはこのことをいうのだろう。前回2001年に演奏された「俗謡」に比べると音色の鮮やかさや強烈なリズムなどは影を潜めたが、今回は土俗的な魅力を前面に出している。演奏されるたび、聴くたびに新たな魅力が引き出される。丸ちゃんマジックに今回もやられた。


【高校編3】
精華女子高校(藤重佳久)
1:ルイ・ブージョワーの賛歌による変奏曲(C.T.スミス)・・・金

課題曲は元気爆発。爆発しすぎてファンファーレでミスったり、鳴らしすぎなところもあるが、曲の性質に合っている。自由曲は精華の本領発揮。金管楽器の後押し奏法が耳につくところが残念だが、全ての奏者が悲鳴を上げる超絶技巧をいとも簡単にこなし、重厚かつ流麗に音楽を作り上げてゆく。まさに「華麗」という言葉がふさわしい演奏。今回も堪能しました。


洛南高校宮本輝紀
1:交響曲第1番「ギルガメッシュ」より(B.アッペルモント)・・・銀

序盤、全体的にミストーンが目立って微妙な滑り出し。テュッティ・サウンドになると力も抜けたのかサウンドがやわらかくなったが、奏者の実力不足は否めない。自由曲も難曲を良くこなしていたが、サビの部分などは音量が足りないし、サウンドがあまりにも薄い。ソロも音色・歌い方ともに弱い。


東海大学付属高輪台高校(畠田貴生)
1:楽劇「サロメ」より 7つのヴェールの踊り(R.シュトラウス)・・・金

隙のない素晴らしい「パクス・ロマーナ」。これまでの中では最も作曲者の意図を汲んだ演奏だったのでは。その流れで「サロメ」へと続き、雰囲気作りはOK。「サロメ」ですが、やはり高校レベルの演奏で非常に上手なんですが妖艶さとか倒錯的美の世界などは感じられない。終盤の畳み掛けるようなプレストは見事でした。


福岡工業大学附属城東高校(屋比久勲)
4:アルプスの詩(F.チェザリーニ)・・・金

なんとも重厚でまばゆいサウンド。おそらく奏者の演奏レベルは全出場者の中でトップクラスにある。個々の音色が素晴らしい上にサウンドのまとまり方が半端ではない。以前の金管主体の骨太サウンドから変えていこうと近年模索していたが、今年ようやく答えが見つかったようだ。金管は余裕を持った包容力のあるサウンドで、木管が輝きを増して聴こえてくる。曲との合性も良い。終盤のコラールは落ち着いており、じっくりと聴かせてくれる大人の演奏。九州大会では聴かれなかったオルガン・サウンドも復活。素晴らしい!


明石南高校(谷口昌弘)
2:バレエ音楽「シンデレラ」より(S.プロコフィエフ)・・・銅

課題曲は堅実な演奏だと思う。勢いをつけようとして終盤テンポ感が乱れたのが残念。「シンデレラ」もよく健闘していたが、プロコフィエフにしては音が明るく、場面や曲想に合っていない。ワルツのフレーズ感もいまいち。「夜」は緊張感を増すためにさらに一工夫ほしい。終曲は十分に盛り上げてくれて良かった。


常総学院高校(本図智夫)
3:ディオニソスの祭(F.シュミット)・・・銀

元気いっぱいで豪華なサウンドに導かれ、楽しさを十分に表現した良い演奏。これまでの課題曲3の中では一番良かった。パーカッションがちとうるさいかも。自由曲は常総らしからぬ、緻密さにかけた演奏で、まず金管が許容範囲を大きく超えた爆音を出しすぎなのと、それに木管が消されてしまい存在感がないこと、ともかく体当たり的で雑な演奏になってしまった。かつて全国一とも言われた木管のアンサンブルはどこに行ったのだろうか。


残りの高校編は買うかどうか検討中。5枚目は買うかもしれません。