「ゴスフォード・パーク」

ゴスフォード・パーク [DVD]
ゴスフォード・パーク(2001)

 映画館でも観ましたが、久しぶりにまた観たくなってレンタル。
 1930年代イギリス、貴族たちが集まるゴスフォード・パークに一癖ある貴族たちが集まり、そこで富豪の主人ウィリアム卿が殺害される、という、なんだかクリスティーなど黄金期英国ミステリの雰囲気を湛えた物語です。
 この映画で大変なのは、まず登場人物が多い上に人間関係がなかなかつかみにくいこと。私はあまりそういうのは気にしないのですが、連れ合いはかなり気になるタイプらしく、DVDを止めてはいちいちメモしておりました。最小限の登場人物の顔と名前さえ覚えておけば、この群像劇の雰囲気だけは楽しめます。
 正直言って真相などは、本格ミステリファンなどからすれば、あまり驚くようなものではなく、普通に落ち着くべきところに落ち着きます。
 しかしこの映画が優れているのは、何といっても1930年代イギリス貴族の生活が、アンティークな雰囲気とともにリアルに再現されている点で、役者さんたちの演技も見事にそれにマッチしています。
 特に素晴らしいのは、華やかでドロドロとした貴族たちの生活だけでなく、それを支える裏方の使用人たちの世界が丹念に描かれているところです。屋敷の階上と階下、それぞれにルールがあり、語られる言説も当然異なってくる。事件に関わることだけでなく、使用人一人一人の性格や人生が、その一瞬の場面ごとに活写されているようです。
 考えてみれば、使用人ほど屋敷の内部事情に精通し、自由にどこへでも入り込むことのできる人物はいません。この映画ではそうした使用人社会の性格が、ミステリの内容にも深く関わってきます。ノックスの十戒で、使用人は犯人であってはならない、といったようなことがありましたが、古典ミステリでは「見えない人」であった使用人にスポットを当てて、黄金期の雰囲気を描き出したという意味で、この作品には本格ミステリの歴史が踏まえられているのかもしれません。