なにわ《オーケストラル》ウインズ2007
- 蘇る火の鳥(スティーヴン・ライニキー)
- ウィリアム・バード組曲(ゴードン・ジェイコブ)
- 序曲「春の猟犬」(アルフレッド・リード)
- H.R.H.ケンブリッジ公(マルコム・アーノルド)
- アンデルセン物語(マーティン・エレビー)
- コンサートマーチ「アーセナル」(ヤン・ヴァン=デル=ロースト)
- メキシコの祭り(オーエン・リード)
- マーチ・エイプリル・メイ(矢部政男)
- 川の流れのように(見岳章/真島俊夫編)
- ゲバゲバ90分(宮川泰/宮川彬良編)
- 指揮:丸谷明夫、立石純也
- 演奏:なにわ《オーケストラル》ウインズ
- 録音:2007年5月4日 大阪ザ・シンフォニーホール/5月5日 東京芸術劇場
今年も恒例の、関西プロオケ管楽器奏者が丸ちゃんのもとに集合。毎度の如く、古典的名曲と現代のおなじみの曲と比較的新しい作品がバランスよく配置されていて、良いプログラムだと思います。ゲスト指揮は鹿児島県立松陽高校の立石純也先生。まだ全国出場のキャリアは短いものの、「なにわ」を振れるまでになったとは驚き。
まずオープニングはスクール・バンド向けのライニキー「蘇る火の鳥」でスカッと決めて、いきなり雰囲気をがらりと変えて古典の「ウィリアム・バード組曲」へ。この曲は教会音楽をモチーフにしているのだと思いますが*1、上品で格調高い音楽はオケ管楽器奏者の面目躍如といったところ(終盤、トロンボーンが高音を上ずらせる場面があって残念)。吹奏楽の響きってこういう古典とか教会音楽とかにしっくりくる。演奏会ではどうしても地味な印象になりますが。
「春の猟犬」は吹奏楽ファンにはおなじみの曲だけに、もっと積極的な表現がほしいところ。きちんきちんと仕上げてくるところは流石ですが、リードの曲ならもっとがんがん攻めてよい。こういうところは佐渡裕のほうが好き。一方、アーノルド「H.R.H.ケンブリッジ公」は初めて聴きましたが、そういうきちんとした演奏が凄くしっくり来る曲で、とてもよい演奏だと思いました。アーノルド版ウォルトン風戴冠式行進曲のような感じ。
「アンデルセン物語」は最近の楽曲。全体的にコミカルとロマンティックが交互に現れる組曲。押しが弱くあっさりした印象。「マッチ売りの少女」とか「雪の女王」とかは、もっと暗くてドロドロしたところも欲しいなあと。美しい・楽しいだけではメルヒェンにならないし。
CDは2枚目に移って、おなじみのヴァン=デル=ローストの名マーチ、「アーセナル」で幕開け。うん、無難な演奏ですね。そしておそらくメインの「メキシコの祭り」。非常に難しい曲だと思いますが、そつなくこなしているあたりはお見事。しかしスローな部分は美しいのに、速い部分になると迫力がなくなってしまうのは何でだろう? 第一楽章の「アズテック・ダンス」、第三楽章の「カーニヴァル」、もっとラテンらしい陽気さを前面に出した熱いものが欲しいと思いました。全体として、木管中心のサウンドは流石の広がりと輝きを見せるのですが、金管の音色やアタックがもうひとつで、消化不良の印象がありました。
ボーナス・トラックの課題曲は、楽曲自体への感想とともにまた次回にでも。