石持浅海『扉は閉ざされたまま』

扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)

扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)

<カッパ・ワン>第1期生としてデビューして以来、石持浅海は4作の作品を発表しましたが、きたろーが読む限りその全てが年間ベスト級の傑作ばかりだと考えています。執筆ペースが上がってもその勢いは衰えません。本作は、著者初の倒叙ミステリー。堅牢なロジックが売りの著者だけに、探偵と犯人とがどのような論理的対決を展開するのか、期待が高まります。

 大学サークルの同窓会。就職などでバラバラになった仲間たちが久しぶりに成城の豪華なペンションに集まったとき、伏見亮輔は新山和宏を殺害する計画を実行した。新山は睡眠薬を飲んで完全に熟睡していた。眼鏡と腕時計をサイドテーブルに置き、彼のボストンバックから着替えの下着類を出しておく。新山を浴槽に沈め、溺死させる。服を脱がせて籐椅子の上におく。これで「薬を飲んだ後入浴しようとして、そのまま湯船で眠っておぼれた男」が完成した。ドアをロックしたうえで内側からドアストッパーがかかるように工夫してドアを閉める。密室殺人、完了。
 眠ったまま起きて来ない新山に疑問を持つ仲間たちはいないようだった。しかし碓氷優佳だけは違った。優佳の昔のままの理知的で鋭い頭脳は、ロックされて開かない新山のドアを見て疑問を感じたようだった。伏見は計画遂行のために、優佳を最も警戒する・・・。

政宗九さんがおっしゃっていたとおり、これは傑作です。年間ベストなら余裕で上位3位以内には入るでしょう。何よりロジックの冴えが素晴らしい。『水の迷宮』のときにも思ったんですが、今日本で最も美しいロジックを書ける人は石持浅海だと、本作で確信しました。まだまだ引出しがありそうなところが末恐ろしいですね。
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