鳥飼否宇『痙攣的 モンド氏の逆説』

痙攣的

痙攣的

久しぶりに鳥飼否宇の本を読みました。といってもその前に読んだのはデビュー作の『中空』だったわけで、しばらく放置状態だったんですね。今回は「逆説」という言葉に惹かれて買ってみました。それにしても正統派横溝な『中空』と比べて、ものすごい前衛作品になっていたんですね。驚けたし、面白かったです。本格かといわれると違うかもしれませんが、微妙かな。サプライズの方法論が、これまでの本格ミステリのそれとは全然違う気がします。
『痙攣的』は中短編集で、収録されているのは以下の5本。

「廃墟と青空」 ロックの破壊と創造を目指して一人のプロデューサーが作り出した伝説のロック・バンド「鉄拳」。そのデビューライヴの只中で、メンバー全員が忽然と消え、ステージ上にはプロデューサーの死体だけが残された。ライヴハウスは地下室で出入り口はひとつだけの完全な密室。満員の客が注目する中で、犯人はいかにして密室から消えうせたのか?

「闇の舞踏会」 今をときめく前衛的芸術家が一同に集うアート・イベント「カーニバル――美は乱調にあり」の開催前日、プレ・パーティーの最中に一人の前衛的舞踏家が謎のダイイング・メッセージを残して殺される。芸術をめぐる苦悩か、俗的な確執か。

「神の鞭」 人気アート・パフォーマーが新作のパフォーマンスを見せるために芸術関係者たちを日本海に浮かぶ孤島に集めた。パフォーマンスが始まったとき、「特等席」で見ていた招待客の女性の姿が消え、混乱の中パフォーマーの死体が発見される。

「電子美学」 科学的なイカ研究を行っている綾鹿イカ学研究所に勤務する老田美香が、実験の被験体となったときに体験したおぞましい出来事とは・・・。

「人間解体」 「この感覚が美なのか? だとすれば、美とは痙攣的なものに違いあるまい!」――モンド氏の味わった感覚とは。

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