米澤穂信『クドリャフカの順番』

クドリャフカの順番―「十文字」事件

クドリャフカの順番―「十文字」事件

待望の古典部シリーズ3作目。前2作で着々と準備されていった神山高校文化祭、俗称『カンヤ祭』がいよいよ開幕。
角川は2作出した後、米澤穂信をスニーカーから出すつもりはなくなったのかもしれない。才能ある作家がこのまま埋もれてしまうのか・・・という我々ファンの心配を東京創元社が救い、「青春ミステリ」の書き手として角川がもう一度注目したのでしょうか。四六版フランス装で静謐な教室の様子を写した表紙には、もはやライトノベルの影もありません。同時期に再販された『氷菓』と『愚者のエンドロール』の装丁もイラストではなく学校の風景になっているようです。まあどんな形にせよ、古典部シリーズが再開されたのは嬉しいことです。

3日間に渡って盛大に催される神山高校文化祭が、いよいよ開幕した。しかし古典部の面々は「限りなく積まれた例のあれ」を前に複雑な気持ちで立ち尽くしていた。文化祭で売る古典部の文集を、手違いで刷りすぎたのだ。中身には自信がある、しかし3日間で知名度も無い古典部が人の通りかからない4階の部室で売るにはあまりにも多すぎる。しかし文化祭は始まったのだ。「省エネ」をモットーとして店番をするホータローと漫研と掛け持ちの摩耶花以外の2人は、一部でも多く文集を売るためにそれぞれ活動を開始した。一方文化祭の盛り上がりの中で、様々な部の持ち物がひとつまたひとつ盗まれ、犯行声明が残されるという不可解な事件が、静かに進行していた・・・。

一流のライトノベルであり、本格ミステリとしても良作です。期待通りの出来でした。
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