第50回福岡吹奏楽コンクール(高等学校の部・1日目)
昨日開催された1日目だけ見に行ってきましたよ。全国大会常連の有力校が集中していてとても聴きごたえがありました。
福岡の場合、福岡、筑豊、北九州の3支部で予選が行われ、上位校が県大会に進みます。県大会で九州大会への代表が決まります。中学校の福岡支部の場合、支部の前に地区予選が行われたりします。超難関ですが、高校の場合上位5、6校はほとんど決まっていて、残り2、3の枠をその他の団体が争うという格好になっています。
第50回福岡吹奏楽コンクール 於:福岡サンパレス 高校の部・1日目 1.久留米高校 II:歌劇「運命の力」序曲(ヴェルディ)・・・銀 2.九産大九州航行 III:トリビュート(キャンプハウス)・・・銀 3.筑紫丘高校 I:交響曲第2番より(アーノルド)・・・銀 4.伝習館高校 II:気高きカスケード連峰の歌(A.リード)・・・銀 5.東福岡高校 III:呪文と踊り(チャンス)・・・銀 6.泰星高校 I:喜歌劇「小鳥売り」セレクション(ツェラー)・・・銀 7.九州女子高校 II:稜線の風〜北アルプスの印象(八木澤教司)・・・金 8.三池高校 I:海の男達の歌(R.W.スミス)・・・銀 9.浮羽工業高校 II:祝典序曲「祈りは時の流れに輝く」(福島弘和)・・・銀 10.福岡高校 II:バレエ音楽「アパラチアの春」より(コープランド)・・・金 11.博多高校 IV:「ボルツァーノの娘」序曲(磯崎敦博)・・・銅 12.精華女子高校 I:ルイ・ブルジョワの賛歌による変奏曲(C.T.スミス)・・・金 13.福工大附属城東高校 IV:アルプスの詩(チェザリーニ)・・・金 14.古賀高校 III:歌劇「いやいやながらの王様」よりスラブ舞曲(シャブリエ)・・・銅 15.武蔵台高校 II:序曲「ピータールー」(アーノルド)・・・金 16.西南学院高校 II:シンフォニックバンドのための幻想曲「山の物語」(小長谷宗一)・・・金 17.大牟田高校 I:交響詩「ローマの祭り」より1,4(レスピーギ)・・・金 18.中村学園女子高校 II:バレエ音楽「くるみ割人形」ファンタジー(チャイコフスキー)・・・金 19.宗像高校 II:リバーダンス(ウィーラン)・・・銀 20.城南高校 II:ハリソンの夢(グレアム)・・・金 21.福岡中央高校 II:マゼランの未知なる大陸への挑戦(樽屋雅徳)・・・銀 22.誠修高校 III:波の見える風景(改訂新版)(真島俊夫)・・・銀 23.博多女子高校 II:マジックオーバーチュア(ドス)・・・銀 24.福岡第一高校 II:組曲「惑星」より木星(ホルスト)・・・金 25.福岡工業高校 III:歌劇「ザンパ」序曲(エロール)・・・銀 26.香椎高校 IV:祝典序曲「祈りは時の流れに輝く」(福島弘和)・・・銀 27.春日高校 III:ステラーウインド(鉾山亘)・・・金
金賞団体について順番に感想を書いておきます。
九州女子高校は金管が鳴らず、中低音が弱いためにサウンドに立体感がありませんでしたが、よくアナリーゼの行き届いた流麗な音楽を聞かせてくれました。福岡高校はとても輝かしく鳴るバンドで、特に金管と木管のブレンド具合が素晴らしいのですが、音の処理やアタック、縦の線など甘く、少々乱暴な演奏でもありました。
精華女子高校は持ち前の的確なアナリーゼと正確な演奏、圧倒的な技術力で他との差を見せ付けました。全体的に金管が控え目でしたが、課題曲では少々マイナスかも。自由曲はテンポが速すぎて表現したい音楽が見えませんでした。早いテュッティ・スケールの部分など、バラバラで興ざめでした。ただ、コーダの素晴らしい表現には感動しました。
福工大城東高校は相変わらずの横綱演奏で、曲のまずさを技術でカバーし、駄作といわれる課題曲IVを見事に聴かせました。自由曲もとても完成度が高かったのですが、表現の広がりが感じられませんでした。城東にしてはずいぶんとあっさりした演奏でした。「アルプス」に期待されるオルガン的ハーモニーもまだまだでした。
武蔵台高校は奏者の方向性が一致していて、勢いの伝わる快演でした。耳に痛いブラス・サウンドで金管がちょっと乱暴な気がします。西南学院高校はやはり金管が乱暴でオーバーブロー気味でした。低音の支えをしっかりしてサウンドを意識していないので、Tp1stだけが浮いてしまう結果になっていました。しかしこの2団体は思い切りの良い演奏で、無鉄砲な若さに魅力があります。
大牟田高校は、安定した技術力に支えられた素晴らしい演奏でした。特に課題曲の作りには随所にあっといわされる部分が多く、よく作りこまれていました。しかし自由曲、特に主顕祭は2度のTpソロのミスや最終ブリッジでのアンサンブルの乱れ(一瞬演奏が止りかけました)などがあって、安心して聞けない部分が多かったです。珍しく後半部分から始まるチルチェンセスは完成度が高かったです。
中村女子高校は、往年の活躍を知る吹奏楽ファンとしては残念な演奏でした。きちんと音は鳴っていてミスもないのにサウンドにまとまりがなく、漫然と吹いている印象があります。「くるみ割人形」は場面がころころ変わる楽しい曲ですが、それだけサウンドや表現の種類をそろえなければならない難曲です。残念ながら今回の中村の演奏には色彩感がありませんでした。
城南高校は主張のはっきりした見事な演奏でした。課題曲が特にくっきりはっきりして良かったです。自由曲は曲が曲だけに、木管の曲芸大会に終始して表現まで入っていないと思いました。ウォーターゴングや最後の伸ばしなど、音楽的に疑問を感じざるをえない無意味な時間が気になりました。
福岡第一高校の課題曲IIはこの日一番の鮮やかなサウンドと解釈でした。どこにも隙がなく、最初から最後までスコアがくっきりと見え、目を見張る好演でした。自由曲もこの超有名曲を見事に演奏できており、とりわけ随所で登場するテュッティ・サウンドの鮮烈さには目が眩みました。終盤でのテーマの繰り返しを聞かせる工夫が欲しいのと、最終部での木管のミスさえなければ、完璧な演奏でした。
春日高校は、武蔵台高校と同様に勢いのあるときに耳に痛いほどのブラス・サウンドが魅力のバンドです。決して上質の音楽ではありませんが、高校生らしいド派手な演奏は素晴らしいと思います。春日、西南、武蔵台の3校は金賞でしたが、ともにアンサンブルに難があると思います。
銀賞団体では、男子校ながらフルート、サックスを中心にしっかりとしたアンサンブルが垣間見え、音楽を楽しんでいた東福岡高校、同じく男子校ながら木管を中心にしたきめの細かい音楽を作ろうとする努力が良く分かる泰星高校、サックスを中心に生徒の自主的な音楽作りが見られた福岡中央高校、先生の手作り楽譜で少人数ながらも色彩感のある自由曲を聞かせた福岡工業高校などが印象に残りました。
ところで今日のステージで最も素晴らしかったのは、ステージ係を担当した精華女子高校の生徒さんでした。的確なセッティングと急ぎすぎずてきぱきとした動きでほとんどプログラム進行に乱れを生じさせなかった彼女達の働きは、すべての吹奏楽部員の模範になると思います。
代表は今日の2日目の結果が出てから発表されます。参加された皆様、お疲れ様でした。