連城三紀彦『美女』

美女 (集英社文庫)

美女 (集英社文庫)

「夜光の唇」 国内最高の腕を持つカリスマ整形外科医の元を訪れた美女は、自分をむしろ醜くしてほしいと願い出た。その女の魅力に取り付かれる整形医。彼女のたくらみとは。
「喜劇女優」 男、女、浮気相手、親友、妹・・・。破局に至るまでのプロセスはいわば7人のドラマだった。女は告白を始める。親友は私が生み出した妄想だったと。一人が消えて、6人のドラマになった・・・。
「夜の肌」 死の床に臥した妻が最後に語りだしたのは、自分が夫を騙していたことだった。ずっと夫ではない別の男を愛していたと。
「他人たち」 マンションの別々の部屋に住み、自由を持ちながらも「家族」を演じていた娘の私、母、父、兄、祖父。私はそんな似非家族が憎くて、壊してやりたくてある計画を立てた――。
「夜の右側」 あなたの奥さんは私の夫と浮気をしている――女はそういって誘惑してきた。奇妙な交換夫婦の果てに、私は妻を絞殺した。
「砂遊び」 性愛への欲望を持ち続け、妻を裏切り浮気相手を待つ男優。彼と彼女たちが演じるドラマの真の姿とは・・・。
「夜の二乗」 帰宅すると妻の絞殺死体があり、警察に電話をしたという夫。しかし自分のアリバイとして提示したのは、妻が死んだ時間には自分は別荘で別の女と過ごし、彼女を殺害していたという犯人としてのアリバイだった。
「美女」 妻は浮気相手を自分の妹だと疑っている。私が偽の浮気相手を仕立てるために白羽の矢を立てたのは、行きつけの居酒屋の女将だった。垢抜けない里芋のような女に浮気相手の役が務まるだろうか?

政宗九さんの感想(2005-09-27)を読んで、猛烈に読みたくなって購入しました。素晴らしい作品を教えてくださってありがとうございます。確かにこれは傑作でした。
本格ミステリという観点から行くと、もちろん全部が傑作というわけではありません。いかにも恋愛小説という感じのものや何が言いたいのか良くわからない叙情的な作品までさまざま。しかし「喜劇女優」はミステリ史に残る傑作です。本当に凄い。連城の驚くべき超絶技巧に、最後のページに向かっていくにしたがって手が震えていくのがわかりました。
連城三紀彦は好きな作家なんですが、それほど読みこなしているわけではありません。いい機会なので読んでいない長編を読みたいなあと思うんですが・・・まったく書店にありません。こういう状況は何とかしてほしいものですね。
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