アガサ・クリスティー『カーテン』

カーテン (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

カーテン (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

老齢で足腰が立たなくなり、車椅子と従僕がなければまともに生活が出来なくなっていたポアロは、なつかしいスタイルズ荘に泊まっていた。ポアロはそこへ友人のヘイスティングズを呼び寄せる。ポアロは言った。イギリス各地で起こっている5つの殺人事件、そのすべてにおいてこれしかないという犯人が捕まっており、自供もなされて解決済みに見える。しかしその背後にはこれらの事件の真犯人である殺人鬼Xがいるのだ。そしてそのXは新たな殺人を犯そうとして、今このスタイルズ荘に潜んでいる・・・。驚くヘイスティングズに、ポアロは自分の目となり耳となって、スタイルズ荘の様子を知らせて欲しいと彼に頼んだ。奔走するヘイスティングズだが――。

少し読んで、ヘイスティングズも歳をとったなあと。妻に先立たれ、子どもも独立した侘しい壮年。もっとやばいのはポアロで、こっちは足が立たず体の自由が利かず、車椅子と従僕がなければ何も出来ないというありさま。なんだか悲しくなります。舞台となるスタイルズ荘はクリスティー処女作の舞台ですが、昔との違いも強調され、時の流れを意識させる小説です。
しかしさすがクリスティーが最後まで取っておいたネタ。これはなかなか凄いことをやっていますよ。真相が明かされて、ああそうか、何でこのことに気がつかなかったんだという感覚。これこそが本格ミステリの醍醐味です。
ポアロ最後の事件にして、クリスティー生前最後の作品。
>感想ページへ