大倉崇裕『丑三つ時から夜明けまで』

丑三つ時から夜明けまで

丑三つ時から夜明けまで

幽霊は存在する、ということが証明されてしまい、数多くの未解決事件のほとんどが幽霊の犯行であるということが明らかになった。壁をすり抜け指紋も残さず、特定の人物への恨みを持った幽霊の犯罪・・・。このやっかいな犯罪者(?)を取り締まるために静岡県警は特殊チームを結成した。幽霊専門の特捜チーム、捜査五課。リーダーの七種警部補を始め、メンバーは奇矯な格好をした変人ばかり。常識人の一課とはことあるごとに衝突するのだった。
幽霊専門チーム、捜査五課と一課から派遣されて彼らと行動を共にする「私」の活躍を描く5編。

いやー面白かった。幽霊という存在が前提なのでフーダニットやハウダニットはあんまり関係がないかと思いきや、しっかりと意外な犯人や真相が用意されているから油断ができない。心地よく騙されました。
ただ余りにも端正すぎて、逆に凄みが感じられないのが残念。けっこう凄いことやっているんだけれども、その凄さがダイレクトに伝わらない。小説技術の問題だと思うけれども、もっと読者を驚愕させることはできたはず。
なんにしても面白かったです。短編の一つ一つに安定感があり、設定の妙も効いている。変わったミステリを楽しく読みたいという人にお勧め。
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