大山誠一郎『仮面幻双曲』

仮面幻双曲 (小学館ミステリー21)
仮面幻双曲

昭和22年11月、私立探偵の川宮圭介・奈緒子兄妹は、占部製糸社長・占部文彦の依頼を受けて、その邸宅を訪れた。文彦は、弟の武彦が自分の命を狙っているとうったえる。一卵性双生児として文彦とそっくりな顔をしていた武彦は、近頃整形手術をしてまったく別の顔に変わり、整形科医を殺害して逃走しているという。身辺警護を頼まれた川宮兄妹は2人交代で寝ずの番をしたが、翌朝占部文彦は寝室で死体となって発見され、厳重に戸締りをしていたはずの窓は開け放たれていた。窓が内側から開けられたということは、誰か文彦が信頼していた人物に化けていた武彦に殺されたのだろうか? はたして誰が武彦なのか?

つまらないつまらないという評判を聞いていたのですが、結構面白かったです。本格ミステリ信者以外お断りの雰囲気ではありますが。その前提を踏まえれば、これほどわくわくする謎解き小説も少ないのでは。キャラクターが記号にすぎず、台詞も舞台も事件の進行も作りものめいていて、警察の捜査があまりにも杜撰という点では、『りら荘事件』を彷彿とさせました。まあ『りら荘』のほうが事件が派手で息つく暇もない面白さがありますが。
解決編の最初に提示される推理と真相は凄かったです。しかし、そのあと細部が徐々に明らかにされてゆくにしたがって、最初のインパクトも興奮も、徐々に醒めていきました。サスペンス抜きの純粋本格ミステリとしても、絶賛するのはためらわれます。
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