山田正紀『カオスコープ』

カオスコープ (創元クライム・クラブ)
カオスコープ

ぼくは解離性記憶障害なのか。鳴瀬君雄は過去の一時期以降の記憶を再生できない。彼が乗っていた車がコンテナを積んだトラックと正面衝突したが、車からはじき出されたおかげで奇跡的にほとんど無傷で済み、自宅へ急ぐ。自宅には血の海の中に置かれ、喉を切り裂かれた父の死体、そして鳴瀬君雄のポケットには血痕の付いた果物ナイフが。ぼくは父を殺したのだろうか? 覚えていない。悪夢は続く・・・。
一方、巷を騒がす「万華鏡連続殺人事件」を追う警視庁の鈴木惇一は、上層部の決めた捜査方針に疑問を抱き、独自に捜査を進めるうち、鳴瀬君雄にたどり着く。そして彼の実家で死体を発見するのだった。

本格ミステリではないけれど、山田正紀が最近こだわっている「アイデンティティの揺らぎ」を扱った長編ミステリ。
SFとしてとても面白かったです。SF的な驚きを味わったあとに、ミステリ的な驚きがやってくるあたりは、広義の本格ミステリと考えてもいいのかも。
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