鳥飼否宇『樹霊』&麻見和史『ヴェサリウスの柩』

樹霊 (ミステリ・フロンティア)
樹霊

植物写真家の猫田夏海は、北海道の巨木を撮影する旅行の最中、古冠村の巨大な老ミズナラが地すべりのために移動して、それでも倒れずにしっかりと立っているという椿事があったことを聞き及び、好奇心の赴くままに現地に向かった。村役場の青年鬼木に案内してもらったが、現場はアイヌをテーマにしたテーマパークの建設予定地で、大規模な自然破壊に夏海の心は痛む。鬼木によれば、移動したのは大ミズナラだけでなく、街路樹のナナカマドも立て続けに移動しているという。いったいこの村で何が起こっているか。折しもテーマパークをめぐって、建設業者と結託した地元有力者、公共事業でしか村が立ち行かないことに悩む改革派の村長、地元のウタリ協会会長やアイヌ出身の道議などが対立を深めていた。そしてついに事件が発生する――。

ヴェサリウスの柩
ヴェサリウスの柩

東都大学の解剖演習で、「ご遺体」の中から一本のシリコンチューブが摘出された。その中には解剖学の教授である園部を名指しした脅迫めいた文章が書いてある紙片が入っていた。そしてその夜、助手の千紗都は標本室で第二の脅迫文を発見し、さらに「ご遺体」がドブネズミに食い荒らされる現場に出くわす。いったい誰がこんな手の込んだ罠をかけたのか? 尊敬する園部教授に危険が及ぶことを恐れた千紗都は事務員の梶井とともに事件の真相究明に乗り出す・・・。

20日ぶりです。本当に忙しくてどうしようもない状況ですが、ミステリは好きなのでちびちびと読んでいます。
というわけで、たぶん今年最後の更新。2006年に出た新刊はあと島田荘司にいくつか読み残しがありますが、それはまた来年ということで。
鳥飼否宇の新作はオーソドックスな本格ミステリで、今年は可もなく不可もなくというか、こういう感触の作品が多かったように思います。『樹霊』はそんな平均的本格ミステリのひとつ。まあ面白かったですが。
今年の鮎川哲也賞麻見和史ヴェサリウスの柩』はサスペンスとしては良くできているが、本格ではないということで。
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