中町信『散歩する死者』

散歩する死者 (徳間文庫)
天啓の殺意 (創元推理文庫)
散歩する死者

  • 著者:中町信
  • 出版:徳間文庫 1989年(徳間書店 1982年)

サスペンス作品で新人賞を取り、一時期時代の寵児となったミステリ作家、柳生照彦。しかしスランプに陥って鳴かず飛ばずの日々が続いていた。そんな柳生が出版社の編集者・花積明日子を呼び出して手渡した新作ミステリの原稿は、結末がまだ付いていない「問題編」で、別の作家に「解答編」を書いてもらい、その後に正解編の原稿を柳生が渡すという趣向のものだった。興味を持った花積はこの企画を通すが、読み進めるうち、この「問題編」が最近実際に起こった未解決の殺人事件をそのままなぞったものであることに気づく。柳生に連絡を取ろうとしたが、「解答編」を書くために逗留した宿から、柳生は忽然と姿を消していた・・・。

やはり中町信はトリックのたくらみの奇抜さで魅せる。大胆不敵というか、勇気があるというか、非常に入り組んだ作品構造の中でこのトリックを持ってくる気概にまず乾杯。思い切りのいい作風だと思います。
ただ一方で、全体の整合性はあまり取れていないような。真相の手がかりがほとんどないことも気になりました。うまく読者を驚かせればいいのですが、私はあまり驚けませんでした。
現在は『天啓の殺意』というタイトルで創元推理文庫から手に入れることができます。
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