アガサ・クリスティー『七つの時計』『無実はさいなむ』

七つの時計 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-60)七つの時計 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
七つの時計

チムニーズ館に滞在していた若き外交官たちの一人、ジェリーが睡眠薬を過剰摂取して死んだ。しかし普段からよく眠る彼が睡眠薬を飲んだ理由が分からない上に、現場には整然と並べられた七つの時計が・・・。チムニーズ館オーナーの娘バンドルは、被害者が使用していた部屋から謎の書きかけの手紙を見つけ、手紙に書かれた「セブン・ダイヤルズ・クラブ」という言葉に興味を持つ。そしてセブン・ダイヤルズ・クラブに関わる事件が引き続いて起こり、バンドルは外交官のビルらとともに、クラブへの潜入調査を敢行するが――。

無実はさいなむ (1978年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)無実はさいなむ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
無実はさいなむ

母親を撲殺した容疑で逮捕され、無罪を主張したが獄中で病死したジャッコの罪は、実は冤罪だった――。研究者のキャルガリ氏は、ジャッコの無罪の証拠を携えて、サニー・ポイントのアージル家を訪問した。しかし、身内の無罪に喜ぶかと思いきや、家人たちは皆動揺を見せた。戸惑うキャルガリ氏に、へスター・アージルはこう言い放つ。「問題は、有罪になった人じゃないんです。無罪です」――こうして、キャルガリ氏がもたらした報告は、アージル家に再び2年前の事件と向かい合うことを強いる。乱暴者のジャッコが犯人でなかったのであれば、真犯人はこの中の誰なのか? 猜疑心の中でアージル家は不穏な空気に包まれる・・・。

どちらも、現在書店においてあるクリスティー文庫ではなく、旧版のハヤカワ文庫版で読みました。ポアロもマープルも出てこない作品ですが、面白かったです。というか、クリスティーのノンシリーズって佳作が多いですね。
『七つの時計』は女史初期のスパイ・スリラーですが、スパイ物に対するメタな視点もあり、一読の価値あり。何も考えずに楽しんでいたら、最後にびっくり、といったところ。
『無実はさいなむ』は、逆に登場人物の心理をじっくり考えながら読んでいって欲しい佳品。主観的描写で心理を描くあたりは『そして誰もいなくなった』に通じる。
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