第23回福岡県吹奏楽コンクール(高校の部)

 今聴いてきました。例年に比べてもレベルの高い大会になったのではないかと思います。中堅層のレベルアップが激しいですね。
 プログラム・結果は以下の通り。

第23回福岡県吹奏楽コンクール 高等学校の部
8月4日(土) 於:福岡サンパレス

  1. 九州女子高校 4/「交響曲第3番」より(バーンズ)――銀
  2. 小倉高校  4/交響詩ドン・ファン」(R.シュトラウス)――金
  3. 城南高校  4/バレエ音楽「三角帽子」より(ファリャ)――金
  4. 鞍手高校  1/青い水平線(チェザリーニ)――銅
  5. 福工大附属城東高校 3/歌劇「トゥーランドット」より(プッチーニ)――金・代表
  6. 北筑高校  4/バレエ音楽「ガイーヌ」より(ハチャトゥリアン)――銀
  7. 中村学園女子高校 4/歌劇「グヴァンドリーヌ」序曲(シャブリエ)――金・代表
  8. 北九州市立高校 2/ルイ・ブージョワーの賛歌による変奏曲(スミス)――銀
  9. 大牟田高校  3/宇宙の音楽(スパーク)――金・代表
  10. 穂高校  4/ハンガリー民謡「くじゃく」による変奏曲(コダーイ)――金・代表
  11. 精華女子高校 4/宇宙の音楽(スパーク)――金・代表
  12. 戸畑高校  4/交響詩「ぐるりよざ」より(伊藤康英)――銀
  13. 香住丘高校  3/朝鮮民謡の主題による変奏曲(チャンス)――銀
  14. 東筑高校  3/リクディム(ヴァン=デル=ロースト)――銀
  15. 福岡第一高校 3/「幻想交響曲」より第五楽章(ベルリオーズ)――金・代表
  16. 直方高校  2/国民の強さ(R.W.スミス)――銀
  17. 修猷館高校 4/楽劇「サロメ」より7つのヴェールの踊り(R.シュトラウス)――金・代表

 小倉高校は目の覚めるような鮮やかなサウンドでした。音色も技術も申し分なく、奏者に迷いがないというのでしょうか、堂々としていて聴いていて安心感がありました。ただ全体を通して色彩感に乏しく、明るいサウンド一色で塗りつぶされているような印象を受けました。しかしカラ金は意外でした。
 昨年九州復活金の城南高校は、サウンドも技術も素晴らしく、これまた安心して聴ける音楽でした。小倉高校ほど鮮烈なサウンドではありませんでしたが、安定感は抜群。しかし特に自由曲に面白みがなく、せっかくいろいろな楽章から抜粋したのに退屈な印象を持ちました。「終幕の踊り」はもっと沸き立つような表現力が欲しいところです。
 鞍手高校は逆にサウンドも技術も今ひとつでしたが、表現力に素朴な魅力を感じました。生徒と先生が不器用ながらも一体となってひとつの音楽を作り上げた様に、素直に感動しました。銅賞でしたが、好きな音楽です。
 横綱福工大附属城東高校は、相変わらず極めて高いレベルの音楽で、率直に凄いと思います。支部大会に比べると依然として未完成ながらも武田先生の音楽が形作られてきたように思います。特に支部では何がやりたかったのかよく分からない自由曲が、今回は表現力に磨きがかかり、オペラの名場面が一瞬だけ感じられたような気がします。もう一つ説得力が加わると文句なしです。
 久しぶり代表の中村女子高校ですが、正直言って聴いている時はあまり感心しない演奏だと思いました。技術的にもアンサンブルとしてもあまり見るところが少なく、また音楽表現としても伝えたいものが感じられませんでした。自由曲はもっとロマンティックな曲だと思うのですが、やや重苦しかったです。マーチは流石の安定感でした。
 校名が変わった北九州市立高校(旧戸畑商業高校)、珍しい課題曲2での挑戦ですが、テンポが遅くてマーチになっておらず、またタイトルの「光と風」も感じられませんでした。自由曲は技術的に追いついていない感じですが、サウンドや楽曲解釈には説得力を感じました。
 大牟田高校は、支部よりもさらに磨きがかかり、素晴らしい演奏でした。特に課題曲の「ティラッター」という跳躍から始まるメロディーが素晴らしくシャープかつまとまりがあり、何度でも聴きたいと思わせるだけの魅力がありました。さらに自由曲の「宇宙の音楽」は、楽曲の雰囲気を申し分なく伝える好演だったように思います。特に素晴らしいのは「ハルモニア」で、支部のときよりもテンポをゆっくりめにしてじっくりと聴かせてくれたのには大感激です。ピッコロトランペットも好演でした。「未知」にもミスがなく、ラストのトロンボーンも見事に決まりました。しかし最後のテュッティで何を思ったか「よっこいしょ」と念を押して終演したのは失敗でした。せっかくの興奮が醒めて、台無しになってしまいました。また、精華に比べると木管サウンドが薄かったように思います。
 福岡支部以外から唯一代表となった穂高ですが、あまり印象に残っていません。可もなく不可もなく、といった堅実な音楽だったように思います。
 精華女子高校は、支部大会に比べると課題曲の出来が悪かったように思います。代わりに良くなったのが自由曲で、支部の時にミスの連発でぐちゃぐちゃになっていた難しい部分が、全て、完璧に近い形で改善されていました。わずか2週間でここまで調整できるとは、精華恐るべしです。特に前回オーバーブロウ&破綻気味だったトロンボーンが端正になっていたのは◎。また表現にも磨きがかかり、精華なりに宇宙の音楽を作り上げていたように思います。しかしやはりあの「高速ハルモニア」には違和感ありありです。この部分はこの曲の中心とも言うべきもので、「天球の音楽」の哲学性を考慮すれば、あんなテンポにはならないはずです。「ハルモニア」で聴衆を感動させ、「未知」で聴衆を興奮の坩堝に巻き込む、そんな演奏を期待します。
 銀賞でしたが、香住丘高校東筑高校は、ともに安定感のある演奏で金賞もありうると思いました。いずれも自由曲に演奏しやすいグレード低めの曲を選び、基本に忠実に素直な音楽作りで減点のつけにくい演奏だったと思います。ただここまでレベルの高い大会になると、もう一つ上乗せが必要になるのかな、と思います。
 福岡第一高校は流麗な演奏でした。課題曲では若干テンポ感やサウンドのまとまりに不安なところを感じさせましたが、個々の音色が抜群に良いので聴衆をひきつけます。自由曲はまさに圧巻でした。表現力という点ではまだ詰める余地が多くありますが、ダイナミックなサウンドには度肝を抜かれました。ラストのテュッティは、せっかく畳み掛けるように盛り上がった後のことなので、もうひと伸び欲しいと思いました。
 トリの修猷館高校は、西嶋先生に代わって一年目にして九州大会出場という快挙を成し遂げました。先生の良く動く棒に生徒が良くついていっており、勢いのある演奏でした。課題曲は「これぞマーチ!」とも言うべきスカッとする快演。自由曲はまだ曲の魅力を十分に出し切れていないようにも思いましたが、木管は良かったです。支部からはあまり変化がないように感じました。