北方謙三『三国志』2〜5巻

三国志〈2の巻〉参旗の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)三国志〈3の巻〉玄戈の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)三国志〈4の巻〉列肆の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)三国志 (5の巻) (ハルキ文庫―時代小説文庫)
 第2巻と3巻は呂布の話がメイン。ハードボイルド作家としての北方謙三の筆が生き生きと踊っており、読むほうもグイグイ引き込まれます。『三国志』の武将の中でも人間離れした剛勇を誇る呂布を、北方はただまっすぐな武人として描き、天下を論じる曹操劉備のあり方と対比させます。そんな呂布だからこそ、陳宮との組み合わせが絶妙なものとして浮かび上がります。呂布に比べれば陳宮はいかにも小物ですが、小物だからこそ呂布と組み合わさることによって雄飛し、また武人である自分に活躍の場所を与えてくれる陳宮は、呂布にとってもなくてはならない存在となったのでしょう。
 第4巻と第5巻は袁紹がメイン。呂布のエピソードと比べると、袁紹にはそれほどの魅力はないかなあ。圧倒的な兵力差を曹操はいかにして乗り越えたのか、という戦術レベルの描写がうまくいっていない印象。関羽千里行のエピソードなどいかにも芝居じみた劇的なエピソードはばっさりカットし、北方三国志のストイックな感じが続いてちょっと中だるみ。