柳広司『トーキョー・プリズン』

トーキョー・プリズン
トーキョー・プリズン

終戦間もない日本、廃墟と化したトーキョーでは、日本中から集められた戦犯たちがスガモ・プリズンに拘留され、それとともに東京裁判が着々と進行していた。ニュージーランドで探偵業を営む退役軍人のフェアフィールドは、戦争中に行方不明になった自分のパートナーの消息を探すために、スガモ・プリズンに調査にやってきた。監獄長のジョンソン大尉は、彼の調査を容認する条件として、彼にある仕事を提示した。ゲーリング服毒自殺の謎を写真を見ただけで解いてしまった服役囚、キジマの話を聴き、彼が失った記憶を取り戻す手伝いをしてほしいというのだ。戦争中に収容所で捕虜を虐待した容疑で拘留されていたキジマだが、彼は自分がなぜそんなことをしたのか、記憶がないために悩む。一方、ジョンソンは、キジマの推理能力を買い、スガモ・プリズン内部で起きた服毒自殺(?)事件の謎を彼が解くことに期待を寄せていた・・・。

敗戦、東京裁判天皇制、戦争責任etc.…
この時代だからこそそのとき日本にいた人々が感じざるを得なかったことを、非常にバランスの良い筆致で描き出している点が素晴らしい。イデオロギーから自由になろうとしている柳広司の視線も良いですが、彼の意見を代弁しているのはキョウコの戦争体験のところでしょうか。非常に迫力のある場面だと思います。
ミステリとしてどうなのか、というあたりは感想へどうぞ。
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