島田荘司『UFO大通り』

UFO大通り
UFO大通り

退職した職場の元上司との間にトラブルを抱えた男が、密室の中で、フルフェイスをかぶって白い布で体をぐるぐる巻きにし、首にマフラーをした異様な状態で殺害された。現場近くに住む老婆は、街路をUFOが通り、裏庭で銀色のスーツを着た宇宙人同士が戦争をしていたのを見たという。少女の依頼を受けて、老人ホームに連れて行かれそうになる老婆を救うために、彼女が見たものが何だったのかを調査し始めた御手洗と石岡は、宇宙人と殺人事件との関連を疑う・・・。(「UFO大通り」)

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    • 傘を折る女

月刊島田荘司、ようやく半分。
それはともかく、これは傑作ですぞ! 奇天烈な事件に変人探偵が挑む「UFO大通り」、御手洗の超絶推理が安楽椅子探偵で楽しめる「傘を折る女」、どちらも近年の本格ミステリの中では出色の出来だと思います。
最近の島田荘司は、事件は派手でも真相はしょぼかったり、謎は神秘的でも真相で盛り下がったり、トリックは凄くてもトリビア的だったり、社会派に寄りかかりすぎてテーマとトリックが乖離していたり、そもそもミステリではなかったり、大学教授の御手洗が普通に偉そうだったり、まったくもって本格ミステリとしては微妙な作品ばかりだったと思うんですが、『UFO大通り』はそうではない。『占星術』『斜め屋敷』の豪腕はありませんが、雰囲気はあの頃のまま、ロジックは『御手洗潔の挨拶』など初期短編集を髣髴とさせる出来。
個人的には「傘を折る女」のほうが素晴らしいと思います。この推理はただ事じゃないですね。
これこそ本格ミステリ。やはり島田荘司は凄かった。
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