天城一『宿命は待つことができる』

宿命は待つことができる (天城一傑作集 (3))
宿命は待つことができる

終戦後の焼け跡も生々しいころ、安ホテルでホテルの所有者梶川重作が刺殺された。現場には意識を失った女が倒れており、他に誰もいない。ホテルを出入りするためには唯一の出入り口であるカウンターを通らなければならないし、カウンターの男は、目を放した隙に侵入した女以外に、出入りしたものは絶対にいなかったという。女は筆頭容疑者として拘引されるが、たまたま事件に居合わせた警視庁警部補の島崎は、犯行を否認する女は嘘をついていないと直感する。これが、柳小路美鈴――後にバロネス・ベルとして社交界の名花となる女と、島崎警部との最初の出会いだった。(「宿命は待つことができる」)

日下三蔵セレクトによる天城一選集の第3弾。今回は天城一の幻の第2長編「宿命は待つことができる」が収録されています。
これまでの2冊の中にもしばしば登場していたGHQの大物、ヴィンセンズが前面に出てきて、ダイアをめぐっての陰謀劇が繰り広げられます。何というか、今まで読んだ天城一のテイストとは一味違う感じがしました。密室殺人の真相は流石の出来でしたが。
この本、図書館で借りて読んでいたんですが、貸し出し期限が来てしまったので、後半部分を読むことができずに返却しなければならなくなりました。また後日借り直して、後半の第2部「島崎警部と春の殺人」を読みたいと思います。
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