古野まほろ『天帝のはしたなき果実』

天帝のはしたなき果実 (講談社ノベルス)
天帝のはしたなき果実

県立勁草館高校吹奏楽部はこの夏、惜しいところで全国大会出場を逃した成長株。来るアンサンブルコンテストでは、フランス革命時代に作曲され、ずっと演奏されることがなかったという幻の金管八重奏曲「天帝のはしたなき果実」を演奏することになっていた。しかしそんな中校内で、生徒会長の奥平が首無し死体で発見される。死体のそばには首を天帝に捧げる云々という声明文が残されていた。首はなぜ切られたのか? 「天帝」云々の声明文はアンサンブル曲と関連するのか? 奥平の親友でホルンパートのまほろは、アンコンメンバーたちとともに真相究明に乗り出すが・・・。

大体の評判を聞いてからの読書だったので心の準備ができていたせいか、そこまでひどい作品だとは感じませんでした。
もちろん、「はふう」だの「めるしびあん」(なぜかひらがな)だの、有名な「雉も鳴かずばハーマイオニー」だのといった台詞回しに眩暈がしないでもなかったですが、それもteipeiさんの感想で免疫できていましたから。
一方で、吹奏楽をテーマとしたミステリを読んだのは初めてです。「ダメ金」だの「ビビラート」だの「全国」と書いて「ふもんかん」と読ませるルビなどは、古野まほろ流の四次元殺法ではなく、実際に全国の吹奏楽部員が使っている用語です。あのあたりは私には違和感はなかったなあ。多分吹奏楽やってない人にとってはありえないでしょうけど。
吹奏楽オリジナルの最高傑作に「風紋」を挙げたり、保科洋や兼田敏を高評価しているあたりは、そのセレクトが渋いうえに納得してしまうゆえ、多分著者は実際に吹奏楽部出身だったのではないでしょうか。
だからといって吹奏楽経験者にお勧めできる小説ではないですが。
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