コンクール福岡県大会(高等学校の部)

先週の土曜日に開催されました。朝早くから大変な人入りで、その期待に応える素晴らしい演奏が相次ぎました。

第22回福岡県吹奏楽コンクール 高等学校の部
2006年8月5日 於:イイヅカコスモスコモン

  1. 中間高校  (2)スクーティン・オン・ハードロック(デイヴィッド・R・ホルジンガー)・・・銀
  2. 中村学園女子高校 (1)歌劇「トゥーランドット」より(ジャコモ・プッチーニ/石津谷治法編)・・・金
  3. 八幡南高校  (2)貴歌劇「微笑みの国」セレクション(フランツ・レハール/鈴木英史編)・・・銀
  4. 福工大附属城東高校 (3)エルフゲンの叫び(ジェフリー・ローレンス)・・・金・代表
  5. 穂高校  (1)原石の未来(清水大輔)・・・金・代表
  6. 福岡第一高校  (1)「管弦楽のための協奏曲」より終曲(ベラ・バルトーク/仲田守編)・・・金・代表
  7. 戸畑高校  (1)バレエ音楽「青銅の騎士」より(ラインホルト・グリエール/林紀人編)・・・銀
  8. 修猷館高校  (3)バレエ組曲「女王への忠誠」より(マルコム・アーノルド/近藤久敦編)・・・銀
  9. 鞍手高校  (1)「アルメニアン・ダンス・パート2」よりロリの歌(アルフレッド・リード)・・・銀
  10. 大牟田高校  (1)「ダンス・ムーブメント」より(フィリップ・スパーク)・・・金・代表
  11. 小倉西高校  (1)貴歌劇「小鳥売り」セレクション(カール・ツェラー/鈴木英史編)・・・銀
  12. 朝倉高校  (2)海の男たちの歌(ロバート・W・スミス)・・・銀
  13. 戸畑商業高校  (2)「交響曲第3番」より(ジェイムズ・バーンズ)・・・金・代表
  14. 九州女子高校  (3)「キャンディード組曲」より(レナード・バーンスタイン/グランドマン編)・・・銀
  15. 近代附属福岡高校 (4)太陽への賛歌−大地の鼓動(八木澤教司)・・・銀
  16. 城南高校  (2)バレエ組曲「ヴァレンシアの寡婦」より(アラム・ハチャトゥリアン/石津谷治法・仲田守編)・・・金・代表
  17. 小倉高校  (1)歌劇「トゥーランドット」より(ジャコモ・プッチーニ/石津谷治法編)・・・金・代表

私自身の好みと結果は必ずしも一致しなかったわけですが、代表に選ばれた団体はいずれも素晴らしい演奏だったことは確かです。
中でもサウンドにおいて他を圧倒していたのが福岡第一高校でした。課題曲こそミスが目立ちましたが、自由曲のバルトークは、吹奏楽のシンフォニックなサウンドを極限まで突き詰めた感のある、実に高級な響きを生み出していました。パッセージの速い曲だけに、サウンドよりも木管の超絶技巧に目が行ってしまいそうですが、むしろ早いところは個人の技量に任せて、トゥッティとソロで聴かせるという、いかにもオケ風の演奏でした。もちろん全国大会への代表候補です。
続いて素晴らしかったのは小倉高校です。毎年思うのですが、この高校は個人の技量もさることながら、アンサンブルが良くできていて実にすっきりとまとまりがある演奏をします。「トゥーランドット」は今年大流行ですが、ただがなりたてるだけの無残な「誰も寝てはならぬ」ばかりで辟易します。小倉高校は、歌心を大切にし、オペラの最も美しい情景を実に美しく歌い上げました。心洗われる演奏です。
戸畑商業高校も、サウンドがクリアーな好演。特にバーンズの交響曲金管が秀逸で、複雑な曲の構成にもかかわらず良く整理されていて、それでいて明るいサウンドがホールいっぱいに響き渡りました。表現が積極的で、吹奏楽の喜びを再確認させてくれました。課題曲はまだ木管がもつれていましたが・・・。
穂高は、惜しい演奏でした。独特の湧き上がるようなサウンドで終始引き込まれましたが、自由曲の「原石の未来」は、なんだかややこしい曲だけに聴かせどころをしっかり定めないと、なにが言いたいのかよく分からなくなってしまいます。次々とモチーフが現れては消えていく曲想は、長生淳に似ているかも。もっとメリハリを付けて、さらにラストを工夫する必要があると思います。しかし、今まさに生れている若々しい音楽のエネルギーには素晴らしいものがあります。九州大会でも期待できると思います。
あとはプログラム順に印象に残った団体の感想。
中間高校は朝一番でしたが、とても元気のいい演奏で、この大会のレベルの高さを印象付けました。サックスの音色が良かったです。中村学園女子高校は、奏者の積極的な演奏によって表現的にはかなりのものがありました。ただ、金管の音がとても汚く、特にバス・トロンボーンは楽器本来の音色とはかけ離れた騒音でした。八幡南高校は、中村学園とは逆に、表現は押さえ気味なものの、トロンボーンサウンドが素晴らしく、演奏全体を格調高いものにしていました。特に1stを吹いた女の子はプロはだしの伸びがあり透明感のある音色で、トロンボーン奏者のきたろーはびっくりしました。
全国常連の福工大附属城東高校の演奏には、今回はまったく共感できませんでした。相変わらずの正確なアンサンブルやサウンドの重厚さはありましたが、音楽的には価値の低い演奏だったと思います。課題曲はテンポが速すぎて曲の持つエネルギーの蓄積がありませんでした。自由曲はシンプルな構成の曲だけに、何の工夫もなしではインパクトに欠けます。かつて九州大会での長崎東高校の演奏に比べて感銘度が明らかに落ちました。全体として、ダイナミクスの強弱だけで表情を付けているので(それはそれで凄いのですが…)、表現が表面的でした。九州大会ではより深い表現を期待してます。
修猷館高校は、金賞をとっても不思議ではないと思わせる好演でした。各奏者の音色がとても誠実で、かつサウンドに華やかさがありました。自由曲は指揮者の十八番だけにこなれた感じもありましたが、四面四角な音楽に面白みを感じれなかったのも確かです。鞍手高校はアンサンブルがあまりに雑ですが、指揮者の情熱に奏者がよく応え、大変な熱演となりました。特に課題曲の中間部の歌いこみっぷりが良かったです。大牟田高校は手堅くまとめてはいましたが、もうひとつアピールするものがなくては。あと、自由曲の無残なカットには怒りを覚えました。九州女子高校は実に美しいサウンドでしたが、それだけに表現の幅が狭く、もう一歩抜け出せないもどかしさを感じました。
指揮者が代わって注目の城南高校は、意外や意外、素晴らしいサウンドと音楽で聴衆を魅了しました。まだアンサンブル面で雑なところが目立つものの、課題曲自由曲ともに躍動感溢れる高校生らしい好演でした。指揮者は西嶋先生の教え子なのでしょう。指揮の仕方がそっくりです。また曲もかつて九州大会金賞を受賞した「ヴァレンシアの寡婦」ということで、原典回帰的なところがあり、あのころの生き生きとした城南高校が蘇ったようで、うれしくなりました。