大阪市音楽団「ニュー・ウインド・レパートリー2006」

久しぶりの吹奏楽CD。お目当ては何といってもグレアムの「地底旅行」。


ニュー・ウィンド・レパートリー2006

  1. 素晴らしき3つの冒険 (フィリップ・スパーク)
  2. 丘の上の白鳥 (ヤン・ヴァン=デル=ロースト)
  3. ブルック・グリーン組曲 (グスタフ・ホルスト/ジェイムズ・カーナウ編)
  4. 明日へのファンファーレ (ロバート・W・スミス)
  5. ファンファーレとフリオシティ (デイヴィッド・シェーファー
  6. モマン・ムジカル (広瀬勇人)
  7. アバコ序曲 (ヴィクター・ロペス)
  8. ヴィクトリー!(バンドのためのコンサート・マーチ) (アルフレッド・リード
  9. 交響的情景「地底旅行」 (ピーター・グレアム)
  • 指揮:秋山和義
  • 演奏:大阪市音楽団
  • 販売:ブレーン株式会社

昨年はフランスの小説家ジュール・ヴェルヌ没後100周年だったということで、ヴェルヌの小説をテーマにしたブラスバンド作品が、スパークとグレアムの手によって作曲されました。その吹奏楽編曲版が今回のNWRには収録されています。
スパークの「素晴らしき3つの冒険」は少し力を抜いた感じの中級の作品。メロディーメーカーぶりを今回も発揮して、タイトルどおりわくわくするようなメロディーが続く組曲。1曲目の「海底2万マイル」は行進曲のような進行。途中のTpが少しきつそう。「気球に乗って5週間」は3拍子の浮遊感が出てる。ユーフォのメロディがおいしいなあ。終曲「80日間世界一周」は木管大活躍! 終わり方は少しおとなしいけど、コンサートの2曲目あたりにぴったりの気楽に聞ける好作。
ホルスト「ブルック・グリーン組曲」はもともと弦楽合奏のための曲ということですが、カーナウの名編曲により、まるでホルスト吹奏楽オリジナルのようなサウンドが出ています。雰囲気としては「第2組曲」とかグレインジャーの民謡作品のような感じ。
広瀬勇人「モマン・ムジカル」はいかにも愛の歌、という感じの甘いバラード。大阪市音楽団は(というよりも秋山和義は)どうも表現があっさりしすぎで、ものすごくつまらない曲のように聴こえるのが残念。フェネルやコーポロンをもっと見習えと。
「ヴィクトリー!」は、リードの最晩年の作品。特に記載はないので、遺作ではないのでしょう。イギリス風正統派のコンサート・マーチで、聴かせどころを押さえた絶妙の作曲技法は老いてもさすがリードと思わせます。これまた演奏には不満。サウンドはいいんだけど、漫然と演奏されたマーチで躍動感がない。
今回のメイン、グレアムの「地底旅行」は、昨年の欧州ブラスバンド選手権でブラック・ダイク・バンドが委嘱演奏して優勝を掻っ攫った曲。グレアムのブラスバンド曲らしい、超絶技巧を駆使したかっこいい音楽。ただ、中間部のゆっくりの部分がかなり長くてだれるのと、早い部分がちょっとワンパターンかなと。演奏はかなり力の入った好演。最後のバスドラムはもっとズドン!と欲しい。
他の曲はすべて初級バンド用の教育向け作品。まあこういうのも必要でしょう。
曲目は相変わらず意欲的ですが、初級バンド向けの作品の割合が多くて、曲数の割りにお得感が少なかったです。新曲でいいものが少なければ、古典リバイバルでも編曲物でもいいような気がするのですが。それから、正直言って秋山和義の演奏はあまり好みではないことがはっきりした。オーケストラ畑の人間だけに、吹奏楽には向いていないのではないか。この人の振る吹奏楽演奏でよいものをあまり聴いたことがないのだが・・・。